医療制度構造改革厚生労働省試案に対する提言

厚生労働省保険局医療課福田企画官御中

 医療制度構造改革厚生労働省試案;診療報酬体系の在り方の見直し;2-(2)医療機関等の機能に応じた評価;外来医療 に対して提言申し上げます。
 添付資料に基づく病院診療所の外来診察料格差の是正要望を平成18年度診療報酬改定に盛り込んでいただきたく、中医協基本問題小委員会で検討をお願い申し上げます。

病院診療所の外来診察料格差の是正

 病院・診療所の外来診察格差はかってより存在していた問題ですが、今まであまり検討されていなかった。  内保連としては診療内容と実態を把握した結果、病院・診療所の外来診察料格差の是正を要求する。
 中医協調査専門組織医療技術分科会の依頼で行われた外来診療時間実態調査に基づき、同封資料のごとく単位時間あたり費用の比較を日米の病院・診療所で比較した。 このデータには検体・生体検査等に要する時間・費用は含まれていない。 外来診察料費用を検討する場合に、従来のように初診料・再診料のみの議論は有効ではなく、指導管理料を含めて考える必要がある。
 大病院における紹介状なしの初診患者に対して徴収している特定療養費はその格差是正には役立っているが、根本的な解決策とはなっていない。
 再診療における外来患者モデルは慢性疾患管理を扱った日本経済新聞のそれを採用したが、本モデルは「出来高」と「包括化」の混在する複雑な診療報酬体系の下では、診療所受診患者の全てに適用出来る訳でないが、傾向の把握には有用であった。
 各モデルから明らかなように、200床以上大病院における外来診察料は診療所あるいは米国と比べ、患者に提供される医療の内容を評価すると不当に低く設定されているとしか言えない。 厚生労働省が約束している病診機能分担と連携、すなわち外来患者は診療所へ、という流れを経済的には逆行させるものであり、早急に初診料・再診料・指導管理料を現行の診療所並に近づけるべきである。

2005年11月1日

添付資料;表2枚と解説

内保連代表・斉藤寿一
日本臨床内科医会・清水恵一郎
内保連副代表・茅野眞男

問い合わせ先;独立行政法人国立病院機構 東京医療センター
       外来診療部長-茅野眞男-内線8147
       tel:03-3411-0111  fax: 03-3412-9811
       e-mail:mchino@ntmc.hosp.go.jp


表題
 表1;初診患者における外来診察料の大病院・診療所比較(日米単位時間当り費用)
 表2;再診患者における外来診察料の大病院・診療所比較(日米単位時間当り費用)

脚注
 表1;比較係数とは一時間換算値を単位時間当り万円として表記した。米国病院費用は医師支払いのRBRVS点数の他に病院支払を含む。算出根拠詳細は本文参照。
 表2;#;APC、##;推定値。算出根拠詳細は本文参照。
 

解説【大病院・診療所のコスト計算】

 中医協外来診療時間実態調査での診察時間の大きなばらつきには目をつぶり中央値を使って、大病院・診療所診察料格差問題を検討した。比較には単位時間当りのコスト計算が必要であり、今回の同時間調査で初めて可能となった。コストとしての診察料を考えるには、初再診料だけでなく指導管理料、処方箋料、紹介無し患者が自己負担する特定療養費まで含めるべきである。外来診察料であるから、検体生体検査の時間・費用は含まれていない。診察時間調査では処方時間や検査判断料を分離することは不能であり、それらは含まれると解釈される。
 

【表1;初診患者の単位時間当りコストの病診日米比較】

 日本における大病院とは200床以上の病院である。コスト計算においては、初診料2550円の他に、紹介加算1500円は紹介率30-49%で計算した。特定療養費は過去に調査が無かったが、今回の2150円は中医協調査の中央値である。処方せん料F400の計算方法は大病院はの6剤以内・後発品無・28日以内で69点。診療所は6剤以内・後発品有・14日;71+15=86点とした。
 米国のデータは、国民的保険と言えるMedicareのRBRVS(resource based relative value scale)2005年から得た。米国で病院診療を受けた場合は、医師に払う料金(RBRVS)の他に更に病院費用が発生する。初診(CPTcode99202)の場合に病院費用はAPC(Ambulatory Payment Classification)では5909円であり、医師料金とほぼ同額なので、米国病院診療合計料金は医師支払いの倍として算出した。
 診察時間が同じで比較できるように一時間換算値(単位万円)を“比較係数”として算出した。比較係数2.0、つまり一時間2万円の意味は、患者対面一時間以外の準備時間や必要経費を含んだコストに支払われていると解釈される。ちなみに米国データでは医師部分以外の必要経費部分は総支払額の45%である。
 大病院初診紹介ありの比較係数は1.4と一番低く、現在の紹介加算では不十分と言える。一方大病院紹介無初診の係数は2.3で、自費徴収する特定療養費は制度の歪みの補正に役立っていると評価できる。
 

【表2;再診患者の外来診察料における大病院・診療所間不均等】

 再診患者の大病院・診療所間不均等問題は今回の診療報酬改定において日病協からも指摘されている。表2の日本における再診患者の大病院・診療所比較計算方法は日本経済新聞西暦2005年6月19日日曜版の月2回受診、採血月一回モデルに基づいた。診察時間は中医協調査に基づいた。但し診療所の特定疾患療養指導料無しデータは単純に特定疾患療養指導料2250円を除いたものである。そもそも診療所データはpilot的なものであり、特定疾患療養指導料の有無で診察時間が異なるかは調査していなかったので、再診出来高モデルでの単価は高く見積もられている可能性がある。
 日本は月2回受診で算出され、米国は月一回の数値になっているが、年平均受診回数が日本は米国の2.2倍になっていることが考慮されている。いずれにせよ一時間換算値でみれば同じことである。以上のごとく外来診察コストは日本において診療所が高く病院が低いが米国では逆であることが分かる。






表1 初診患者の外来診察料の大病院・診療所比較  (日米単位時間当り費用)

日本
  分類 初診料 指導管理料等 処方せん料 コスト合計 診察時間中央値 一時間換算円       比較係数
大病院 紹介状有 2550 1500 690 4740 20 14220   1.4
大病院 紹介状無 2550 2150 690 5390 14 23100   2.3
大病院 紹介状無 2550 2150 0 4700 14 20143   2.0
診療所 紹介状無 2740 0 860 3600 9 24000   2.4


米国medicare RBRVS2005                     *病院支払を含む
      合計点数 $換算 円換算$110 所要時間(分) 一時間換算円 比較係数*
診療所 初診 outpatient new 1.72 65.2 7170 20 21511 2.2
診療所 初診 outpatient new 2.56 97.0 10672 30 21511 2.2
病院 初診 outpatient new 1.24 47.0 5169 20 15508 3.3
病院 紹介状 consultation 0.91 34.5 3794 15 15174 3.0
病院 紹介状 consultation 1.85 70.1 7712 30 15424 3.1
病院 紹介状 consultation 2.48 94.0 10339 40 15508 3.1



表2 再診料の大病院・診療所比較(日米)  比較係数とは単位時間当り万円

日本    月二回受診
  分類 指導管理料等 処方
せん料
コスト合計 診察時間
中央値
月2回 一時間
換算円
    比較係数
大病院 再診     4630 8 16 17362.5   1.7
診療所 再診包括 生活習慣病指導管理料   13550 6 12 67750   6.8
診療所 再診出来高 特定疾患療養指導料   11090 6 12 55450   5.5


米国medicare RBRVS2005
  code 合計点数 $換算 円換算$110 所要時間(分)       一時間換算円 病院へ支払い 比較係数
勤務医 99211 0.24 9.1 1000.5 5   12006 #3.3万円 4.5
勤務医 99212 0.64 24.3 2668.0 10   16008 #3.3万円 4.9
勤務医 99213 0.94 35.6 3918.7 15   15675 #3.3万円 4.9
診療所 99211 0.57 21.6 2376.2 5   28514   2.9
診療所 99212 1.02 38.7 4252.2 10   25513   2.6
診療所 99213 1.39 52.7 5795.0 15   23178   2.3